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  • インタビュー「ヒャダイン」ひとつひとつ、悔いのないベストをつくることが大切(前編)
    ミュージシャン・音楽プロデューサー・作詞家・作曲家・編曲家など、音楽シーンの中で多岐にわたる活躍をみせているヒャダインは、動画投稿サイトに投稿した楽曲が話題になる一方、本名・前山田健一名義でも提供曲が2作連続でオリコンチャート1位を獲得し、2010年にはヒャダイン=前山田健一であることを公表している。今回はそんな彼にインタビューを実施。前編では、歌手としてもメジャーデビューする一方で、ももいろクローバーや郷ひろみなどの幅広いアーティストを手掛け続けている彼に、作家を目指したきっかけや影響を与えた音楽、多忙な毎日の過ごし方などについて話を訊いた。

    取材・文:中村拓海
    写真:竹内洋平

    ――ヒャダインさんが作曲家を目指したきっかけと、プロとして活躍するまでの経緯を教えてください。

    ヒャダイン:
    大学3年生の時に、就職活動をするのを忘れていて。これはもう人生終わったと思って、やけくそでニューヨークにブロードウェイ・ミュージカルを見に行ったんですが、帰る前日に9.11のテロがあり、一週間帰れなくなってしまいました。その後、ブルックリン橋のたもとで、「自分は何をしたいかな」と考えていたときに、自分のやりたいことで身を立てたいと思いました。そして、日本に帰ってきてからは週に一回、一時間の作曲講座に通うようになり、そこの先生に勧められて東京に出ました。上京後は地道にコンペに応募をしていましたが、特に反応がなく、自分の立ち位置がわからなくなってきました。でも、前山田健一であることを隠し、「ヒャダイン」名義でニコニコ動画を始めたら、それが好評で自信をもらいました。そうすると自信に比例するようにコンペも決まるようになってきて、2010年に正体をバラしました。

    ――ヒャダインと前山田健一が同一人物であるとわかったとき、驚きながらも納得した人は少なくないと思います。本名を明かそうと思った決定的な理由はありますか。

    ヒャダイン:
    2007年の終わりから2010年までの約3年間、「ヒャダイン」名義でニコニコ動画での活動を繰り広げていましたが、前山田健一としての仕事が増えてくるに従い、ヒャダインとしての活動が減ってきました。忙しくなるにつれ、待ってくださっているファンの方々に申し訳ない、という気持ちが募っていったので、切り札を使うような感覚で本名を明かしました。また、発表当日(2010年の5月5日)は、大島麻衣さんのソロデビューシングルと、ももいろクローバーの『行くぜっ!怪盗少女』の発売日でした。自分なりのプロモーションとしてもちょうどよいタイミングだったということもありますね。

    ――ヒャダインとしての活動が減っていても、前山田健一はちゃんと動いているという意思表示ですね。

    ヒャダイン:
    そうですね。その答え合わせをしていただければしばらくは楽しめるかな、とも考えました。

    ――ヒャダインさんは1980年生まれということですが、ご自身の音楽に影響を与えたものは何でしょう?

    ヒャダイン:
    高校時代に本当によく聴いていたのはピチカート・ファイヴです。その前は小室哲哉さん、その後はつんく♂さんだったり。プロデューサーが好きで、憧れがありました。音作りの面で影響を受けたのもそのお三方です。また、音楽以外だとゲームの影響が強いです。ファイナル・ファンタジー、ドラゴンクエスト、ロマンシング・サガなどは、物語の作り方や飽きせない構造などにすごく影響を受けています。




    ――プロデューサーとしては、いま挙げた方々にどんな影響を受けましたか。

    ヒャダイン:
    曲で楽しませるということはピチカート・ファイヴから教わりましたし、曲をたくさん作るということに関してはつんく♂さんや小室さんから学びました。つんく♂さんは発想の柔らかさやサプライズを仕掛けよう、という姿勢がとても面白くて、そこにはすごく憧れます。

    ――先ほど、作曲家として活動し始めた頃は、なかなかコンペに通らない時期が続いたという話がありました。そんな時、ヒャダインさんはどのようにしてモチベーションを維持しましたか。

    ヒャダイン:
    純粋に、お金がなかったことは大きいと思います。もちろんバイトでも暮らしてはいけますが、音楽で生計を立てている実感がほしい、という思いは、モチベーションとして大きかったです。ただ、流石にずっと決まらないと腐ってきます。だからこそ、動画サイトで皆さんに評価していただいたことで、自分は間違っていないと確認することができたのは、すごく良かったです。

    ――当時はアルバイトをしながら制作を行っていたそうですが、制作に充てる時間をどう確保していたのでしょうか。

    ヒャダイン:
    東京に出てきた頃は息巻いていて、学歴を使うのが嫌だったので、普通のバイトをしながら頑張ってやろうと思っていました。朝の9時から夕方の5時までレンタルビデオのバイトをして、家に帰って6時から12時くらいまで制作に充てるという生活ですね。しかし、フルタイムで働くと非常に疲れるので、理想通りにはいかず……仕事の後はグッタリしたり、寝てしまったりしていました。そのため、アルバイトは次第に時間給の良い深夜の仕事や家庭教師などに移行していき、制作は出勤前の朝~昼にかけて行うようになっていきました。

    ――その頃はどんな機材を使っていましたか?

    ヒャダイン:
    当時は最低限の機材で制作すべく、フリーのソフトシンセが圧倒的に多いWindowsのPCで作業をしていました。個人的にファミコンの音が好きなので、『ファミシンセ』というソフトがお気に入りで、良く使っていたのを覚えています。あと、常に使っているのは「Addictive Drums」というドラム音源ですね。他はケースバイケースです。その制作環境を一度『情熱大陸』(TBS系)で取材していただいたんですが、その後にMacに移行しました。ただ、メインのシーケンスソフトはWindowsでもMacでも『Cubase』を使い続けていますね。ショートカットキーが完全に手に馴染んでいるので。

    ――いろいろなアーティストの仕事を並行して進める際、気を付けていることなどがあったら教えて下さい。

    ヒャダイン:
    特にこれといったことを意識しているわけではありませんが、同じような音を使い過ぎないようには気を付けています。作曲やレコーディングなど、それぞれの仕事がそれぞれのステージで進行していますが、目の前の仕事に最大限集中するタイプなので、ひとつ前のステージのことを思い出したりはしません。なので、この曲でどういう機材を使ったか、どのようなテンションで作ったか、ということをあまり思い出せないんです。プロジェクトファイルもなくなってしまうくらいで(笑)。あるとき昔の曲が採用になったことがあって、自分の曲を再度自分で耳コピして打ち込み直したこともあるくらいです。

    ――楽曲提供やプロデュースをするにあたって、そのアーティストをどこまで掘り下げて調べますか。

    ヒャダイン:
    最適な距離感は人それぞれだと思うのですが、僕はその人のことをなるべく調べて、お話する機会があればできるだけコミュニケーションをするタイプです。その人のキャラクターの延長線上で、聴く人がニヤッとしたり驚いたりするものを作ろうと考えています。



    ――ヒャダインさんはかなり多作なことで知られています。曲をテンポよく、たくさん作っていくコツのようなものはありますか?

    ヒャダイン:
    鍵盤を弾けることと、完璧ではありませんが絶対音感があることが、スピードアップにつながる強みではないかと考えています。また、メロディや展開を頭の中に思い描いてからパソコンの前に座るので、迷いなくどんどん作っていけます。ここも人それぞれで、完璧主義だったりOKラインが高い人は、推敲する作業がより必要になるでしょうから、多作な人を羨んだり、逆に深く追い込む人を羨んだりすることは、不毛な憧れなのかな、とも思いますね。また、あまり細かくやるタイプではないので、基本的に1日、分けたとしても2~3日で一気に終わらせます。

    ――ヒャダインさんは多岐に渡って仕事をしているので、日によって異なると思いますが、おおよそどのようなスケジュールで一日を過ごしているか、教えてください。

    ヒャダイン:
    作曲に一日使える場合は、朝8時くらいに起きて、朝ご飯を食べてからすぐにパソコンの電源を入れて作業します。13時くらいまでやると、その日の終わりが見えてくるので、昼ご飯を食べた後、夕方にかけて微調整や仕上げをして、後はのんびりと完成させます。テレビ収録が入っていたりする場合は、13時くらいまでは同じように過ごして、その後テレビ局に行く、といった流れですね。

    ――作家の方からはよく、締め切りまでの期限が短い依頼が多いという話を聞きます。その点について、これから作家を志す人達にアドバイスできることはありますか?

    ヒャダイン:
    言い訳しないことでしょうか。ひとつひとつがオーディションのようなものなので、手を抜いたものを出す癖はつけない方がいいと思います。とても大変なことで労力もお金も掛かりますが、ひとつひとつ、悔いのないベストを作ることが大切です。これは経験則から言えることですが、そういう曲は、そのとき採用されなくても後々、他のアーティストに採用してもらえますから。やっていくなかで、「こんなに頑張ってもどうせ決まらないんだろう」とか、「結果を見ればいつものメンバーで、結局出来レースじゃないか」と思うことはたくさんあるかもしれません。しかし、腐らずにそのときのベストを作れば、その楽曲は自分のストックになります。そのときのベストはそのときにしか出せないですし、2015年には2015年にしか作れない自分の人生の味があります。それはテクニック的なものではなく、メロディのラインや曲への入り方、作詞家ならば今しか紡げない言葉なのだと思います。それを残すために、腐らず制作し続けることが大事です。
    >インタビュー「ヒャダイン」ひとつひとつ、悔いのないベストをつくることが大切(後編)



    ヒャダイン

    1980年生まれ。本名前山田健一。

    京都大学を卒業後2007年に本格的な音楽活動を開始。

    動画投稿サイトへ匿名のヒャダインとしてアップした楽曲が話題になり屈指の再生数とミリオン動画数を記録。

    一方、本名での作家活動でも東方神起などへの提供曲が2作連続でオリコンチャート1位を獲得。2010年にヒャダイン=前山田健一である事を公表し、作家とアーティストをクロスオーバーした活動を開始。

    アイドルからJPOP、アニソン、ゲーム音楽など幅広い楽曲提供を行うと共に自身も歌手、タレントとして活動する。

    オフィシャルサイト

    2015.02.16

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