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  • 「zopp」作詞は答えのないもの(前編)
    修二と彰「青春アミーゴ」や、山下智久「抱いてセニョリータ」など、数々のヒット曲を手掛ける作詞家・zopp。彼は作詞家やコトバライター、小説家として活躍しながら、自ら『作詞クラブ』を主宰し、未来のヒットメイカーを育成しているなど、多岐にわたって活躍の場を広げている。今回はそんなzoppにインタビューを行い、前半では、彼が作詞家として活躍するまでの経歴やルーツ、独自の作詞法について語ってもらった。
    取材・文:中村拓海

    ――この仕事を目指したきっかけは?

    zopp:
    アメリカに留学したときに、訳詞をはじめたのがきっかけです。高校生のとき、ホストファミリーの下で1年間生活するにあたって、良い英語の勉強法はないかとホストマザーに尋ねました。彼女はもともと学校で臨時講師をしており、教えることに長けていて、日記のように一日一曲必ず英語詞の訳詞をすることを勧められました。それまで日本の音楽や歌詞も何となく耳にしたことはありましたけれど、英語の歌はそれとは本質的に違って、宗教や戦争のこと、差別のことを歌っている人が多かったんです。彼らの歌詞を訳しているうちに「歌詞ってこんなに奥深いものなのか」という衝撃を受け、次第に自分が訳詞した曲に、自分の言葉で詞を付けるようになりました。それが僕の作詞家人生の始まりです。

    ――海外の曲に日本語を乗せていったんですね。

    zopp:
    そうです。ただ、僕が聴いていた海外のアーティストはバンドが多かったので、歌詞は当然歌っている人が書いていると思っていましたし、その時点で作詞家という仕事があることは知りませんでした。その後は趣味で作詞を続けながら、大学卒業後には、現在所属している会社でディレクターとして働き始めました。仕事でお会いする現場の人たちは「本業のほかに、その人は何をできるのか」に興味を持つことが多くて、ある時、某レコード会社のプロデューサーさんに「君はディレクター以外に何かできるの?」と訊かれ「昔から趣味で作詞しています」と答えました。そして、彼から「じゃあ作詞してみればいいじゃない?」と言われ、しばらくはディレクターをしながら時間を見つけて作詞もしていました。

    ――そこから作詞家としての比重が大きくなった理由は。

    zopp:
    作詞をメインにしたのは、やはり2005年の『青春アミーゴ』を書いたことが大きいですね。初めて書いたA面の曲で、それまでは作詞家一本でやっていけるような収入も自信もありませんでした。でも、周りの人からも「秋元康さんや松本隆さんならいざ知らず、今の時代に職業作家でオリコン年間ランキングで1位になる曲に関われるなんてなかなかない」と言ってもらえて、そこに運命的なものを感じたので、作詞に本腰を入れ始めました。当時はシンガーソングライターの方が多かったですし、曲は書かないけれど歌詞は自分で書く、という方も数多くいたなかで職業作家が1位ということは、いち音楽業界人として僕も衝撃を感じました。

    ――当時、ディレクターとして関わっていた方も驚かれたのではないでしょうか。

    zopp:
    そうですね。ディレクター業務は本名でやっていたので、言わなければ僕が書いたことはわかりませんでした。忙しかったこともあってあまり周りに言っていなかったのですが、翌年くらいにその話をし始めると、「もっとちゃんとやるべきだ」と指摘されたんです。

    ――作詞に際して、曲が先にある場合の方が多いと伺いました。書きやすい曲・書きにくい曲、というものはありますか?

    zopp:
    最近はダンスミュージックが主流なので、メロディが細かく覚えづらいものが多いため、書くのに困ることはありますね。日常会話よりも早いテンポで歌わなければならず、普段口にしない速度なので、言葉が自然には出てきません。

    ――作詞をする際、提供先のアーティストについてどのくらい調べますか?

    zopp:
    コンペか指名かといった、仕事の種類によって臨機応変です。コンペとなると相手のことを知らなければいけませんし、指名の場合は、僕らしさを求められていることでもあると思うので、アーティストさんのイメージをあまり考えずに書きたいことを書くようにしています。

    ――その「zoppさんらしさ」について、自分ではどういったイメージをお持ちでしょうか。

    zopp:
    僕はそのあたりを比較的はっきりとブランディングしてきたんですが、周りの作詞家さんたちを見て「こういうことは誰も書かないだろう」と、物語性のある作詞をするようになりました。小説とはまた違いますが、映画を見ている感覚で情景や感情が見えるようにするのはおそらく僕の独特のスタイルです。後はタイトルにインパクトをつけることは大事にしています。

    ――たしかに一度聞いて覚えられるようなタイトルが多いです。どのようにタイトルを思いつくのでしょうか。

    zopp:
    最近は先にタイトルを決めてから詞を考えることの方が多いです。タイトルを考えたら、サビの中からその言葉が入れられるメロディを探して、そこから調整するのが基本ですね。多くの作詞家は書きたい言葉を持て余していると思うんです。現在、作詞も作曲もコンペが主流です。そうなると、「合わせる仕事」が必然的に多くなる。一方、僕は指名の仕事をメインとし、コンペの仕事はほぼやりません。指名仕事だと独自の世界観を描けるので、好きに書かせていただけてありがたいですね。ただ、ちゃんとしたコンペを受けるときは、クライアントが言っていることを理解し、それを汲めるようなワードやタイトルにしなければ、と思っています。

    ――物語性や映像が浮かぶ、というzoppさんの歌詞は、台詞調のフレーズも多いですよね。

    zopp:
    確かに、会話を多く入れるという特徴はありますね。テゴマスの作詞をするなかで僕がハマっていたのは、Aメロの頭に必ず台詞を入れることでした。また、ほかにも色々なフレーズや書き方を研究しましたが、とくにハマっていたのは、「俯瞰で見ない」ということです。ほとんどの小説や歌詞は、俯瞰で見ていることが多いんです。例えば、主人公とヒロインが抱き合って、というシーンを俯瞰で描いたりするものが多いですが、僕は終止主人公の目線で書くことにこだわっていました。そうすると見えるものがまったく違います。

    ――その手法を使うにあたって、何が発想のベースとなったのでしょうか。

    zopp:
    もともと映画が好きなので、映画みたいな作詞をしよう、と思ったんです。そうなると台詞は必要になってきます。大ヒットした『青春アミーゴ』も台詞の掛け合い曲なので、あの曲が現在のスタイルを続けようと思ったきっかけでもありますね。昔は「男と女のラブゲーム」みたいな掛け合いデュエットは多かったんですが、そのまま取り入れてしまうだけでは、昭和歌謡のコピーっぽい感じで、若い子には聴いてもらえません。だから、手法だけを取り入れて新しいものを作れたら、という思いは昔からありました。四字熟語で言えば「温故知新」ですね。

    ――作詞をする際、時間帯や書き方などのこだわりといった、ルーティーンのようなものはありますか?

    zopp:
    僕はどこでも歌詞を書くことはできます。でも、ダラダラ書かず、時間を決めてそれまでには必ず一度提出するというルールは決めています。秋元さんも過去に仰っていたのですが、作詞は答えのないものなので、「1+1=2」みたいな数学的なものではなく、文学的な要素が強い。また、作り上げたものが良いのか悪いのかという判断も、人によって違います。そういった答えのないものは、ゴールを決めなければ何時間でも悩めるんです。僕は「作詞はカレーライスのようなもの」と考えていて、一度作って少し寝かせた方がより作品が良くなると思っています。最近は作詞の制作期間が限られていて、18時に仕事が来て、次の日の朝10時までに書く、という無茶振りもありました。それは何も珍しいことではなく、良いメロディや良い歌詞を作る以前に、早く書けるということは今の音楽業界で作家として生きていく上ではマストなんだと思います。締め切りが短く何度も直される環境が当たり前なので、時間を決めて、ダラダラとやらないんです。

    ――書く場所にこだわりはありますか?

    zopp:
    なるべく1人で書かないようにします。オフィスに行って、スタッフがいるところで書き、書きながら人に意見を求めたりするんです。自分の中から出てくるものというのは限られていますし、ふと何か言葉を思い出したいとき、周りに人がいればすぐに訊ける。オフィスには、知識のあるスタッフがたくさんいるので、「このアーティストに対してこの言葉はどうか?」ということを訊けばすぐに返ってきます。それを知らないまま、書き終えてから「実はこのタイトルもうあるんですよ」と第三者から指摘されて、書き直すのは時間の無駄ですからね。それならばたくさんの人に早めに歌って聴かせて相談した方がいいです。だから、1人で作っているというよりは皆で作っている感じだと思います。

    ――作り方としては1人の作家というよりバンドのようですね。

    zopp:
    そうですね。何を言われても曲げたくない部分は持っていますけれど、人の意見も尊重します。

    ――先ほど「映画が好き」と仰っていましたが、今まで観てきた映画の中でご自分の世界に強く影響を与えた作品はありますか?

    zopp:
    僕はバットマンのようにハードボイルドなものやアクションが好きなので、物語性の強いものはアクション系の歌詞が多かったりします。人が死んだり撃たれたり殴られたりする歌詞というのは、世間一般的にはあまり多くないと思いますが(笑)、僕はそういうものを書くのが好きです。

     『青春アミーゴ』は、『ゴッド・ファーザー』のような世界観を描こうとして作った曲です。友情の部分は『グラン・ブルー』を参考にしていて、曲の仮タイトルも同作の舞台である島の名前から取った『タオルミナのきれいな空』というものでした。だから”Si”(イタリア語、スペイン語などで”Yes”の意)という言葉などを入れています。ただイタリア語では「友達」は「ミ・アミーコ」となって日本人には馴染みがないので、スペイン語の「アミーゴ」の方が耳なじむと思い、調整したんです。

    ――音楽の原体験はU2などのバンドものということですが、実際にバンドへ歌詞を書いてみたいという気持ちはありますか?

    zopp:
    今でも書いてみたい気持ちはあり、最近はビジュアル系のバンドの方たちの歌詞のアドバイザーもやっています。とは言っても、バンドマンが職業作家の歌詞を歌う、ということにはイメージとして違和感がありますから、僕としては「アドバイスしただけ」というスタンスの方が美しいと思っています。

    ――たしかに自作自演の人に書くのには気を使いそうですね。

    zopp:
    勇気が要ると思います。そういう方の歌詞はすごく個性があって、自分の生き様のようなものを反映しています。それに対して僕たちはどちらかというと、仮想世界を作っている感覚が強いです。

    インタビュー「zopp」作詞は答えのないもの(後編)


    zopp

    1980年2月29日生まれ

    アメリカ、マサチューセッツ州ボストンの大学でコンピューターテクノロジー専攻。

    16歳の時、初めてのアメリカ留学を経験。その時に勉強の延長線上で様々な海外アーティストの歌詞を翻訳している内に、作詞の世界に魅せられ作詞家を目指す。作詞活動と並行して、作詞家の育成(zoppの作詞クラブの講師)、ネーミング等を考える(コトバライター)、テレビ出演など、多岐にわたって活躍の場を広げている。

    2013年11月11日に、初小説「1+1=Namida」(マガジンハウス)を上梓し、小説家デビューを果たす。

    1+1=Namida

    zoppによる初の書き下ろし小説

    物語性の強い作品が多く、映画や小説のような作詞スタイルを身上としていることを考えれば、彼が小説家になるのは必然だったのかもしれない。
    モンスター作詞家の処女小説の世界をとくとご覧あれ。

    過去の作品をモチーフにした青春アクションミステリー小説。
     
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    オフィシャルサイト

    2015.01.28

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