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  • インタビュー「ヒャダイン」ひとつひとつ、悔いのないベストをつくることが大切(後編)
    ミュージシャンや音楽プロデューサー・コンポーザーとしても活躍しているヒャダインへのインタビュー後編。前編では音楽遍歴やタイムスケジュールなどについての話を訊いたが、後編では音楽シーンに対して思うことや、若手へのアドバイス、気になっている音楽作家などについて大いに語ってもらった。

    >インタビュー「ヒャダイン」ひとつひとつ、悔いのないベストをつくることが大切(前編)

    取材・文:中村拓海
    写真:竹内洋平

    ご自身の音楽について、どのようなところに自分らしさがあり、それが形になっていると感じますか。

    ヒャダイン:
    「ガチャガチャしているけれど散らかってはおらず、けっこう聴ける」というところかな、と思います。僕は制作過程で作った楽曲を何十回も何百回も聴きますが、最初に聴いた人のことを常に考えるようにしています。出した曲を最初に聴いた人が「ガチャガチャしていて音がバラバラだ」と感じる曲は恐らく不愉快でしょうし、聴いた相手が楽しい気持ちになれるかどうか、ということを常に物差しにして考えると、ガチャガチャしていてもきちんとまとまっていなければいけません。アラカルトでどんどん出しても、ひとつのお皿として成立している必要があります。「寿司+ステーキ+パスタ+ハンバーグ」という「好きなものをとりあえず詰め込みました」というお皿では、ひとつひとつがいくら美味しくても気持ちが悪くなります。



    ――音楽作家の状況は時代によっても変わっていくと思います。大物アーティストが他アーティストに楽曲提供することも増えましたし、当サイトのように、職業作家を育てるようなプロジェクトも生まれました。そうした変化についてはどう捉えていますか。

    ヒャダイン:
    悪いことではないように思います。アーティストが呼び水として知名度の高い作曲家から楽曲提供を受けようというのは、この音楽不況の中でメーカーさんにとってもわかりやすい流れでしょう。もちろん、それによって無名の作曲家のチャンスがなくなる、という見方もあります。しかし、僕も含めて名前が出ている人間ももともと無名でした。無名が故の不遇さというものはもちろんありますが、採用されなかった曲が、名前が売れてから同じアーティストに採用された、というケースもあります。今の状況に文句を言っている暇があるならば、別のアプローチでネームバリューを高める方法を戦略的に考えた方が良いです。

    ――若手クリエイターでヒャダインさんが注目している方はいますか。

    ヒャダイン:
    乃木坂46の「制服のマネキン」や「君の名は希望」、私立恵比寿中学の「仮契約のシンデレラ」などを書いている杉山勝彦さんは素晴らしいと思います。メロディラインの美しさや起伏に加え、「こんな曲も書けるんだ!」という多様性もある。同じことが、でんぱ組.incに曲を書いている玉屋2060%さんにも言えますね。それからBiSに曲を書いている松隈ケンタさんも好きです。かなりロックで振り切っていますけれど、すごくエモい、面白い曲を書かれるなと。それぞれが同業者ではありますけれど自分にはできないことをされている方々なので、食い合わないというか、同業の中の異業種という感覚でいます。あとはEspeciaに曲を提供しているSchtein & Longerというチームが、昔のトレースではあるけど今の音楽として再構築していて粋だなと思いますし、メジャーデビューしたばかりのSugar's Campaignさんもすごく素敵なポップミュージックを作っていて、「この人達が売れるような世の中になってほしい」と願うばかりです。それから、うちの番組(テレビ朝日系列全国放送「musicるTV」)にも出演したキュウソネコカミさんは、歌詞の内容も鬱屈していて攻めている印象を受けますし、曲も振り切れているものの稚拙さはなく、面白いバンドですね。

    ――ご自身の経験から、作曲家やプロデューサーを志す人が、若い頃からやっておくべきことや、心がけたほうが良いと思うことがあったら教えてください。

    ヒャダイン:
    まず、今できないことを“できない”と簡単にあきらめるべきではありません。たとえば、僕はもともと歌詞を書く気はまったくなかったのですが、コンペに出すために歌詞を書かねばならず、「駄目は駄目なりに書いてみよう」と思って提出した歌詞が採用されたことがありました。このように、人生は何があるかわからないので、自分からチャンスの扉を閉じる必要はない。アレンジが苦手だから人に頼む、という発想ではなく、駄目は駄目なりにやってみることが、非常に重要なのだということを経験から学びました。また、僕も若い頃に上の人から言われていたことで、「曲をたくさん作って今のうちにストックを作ること」は大切だと思います。人によって様々な成功体験があり、言うことも様々だとは思いますが、自分が作れる精一杯を作った上で、絞りきった雑巾をそれでも絞るかのようにさらに作って、リミッターを少しでも越えていくという作業は絶対に必要です。でも、作った曲の数は誰かと比べるのではなく自分基準でいいと思いますよ。




    ――近年は宅録環境も多くなり、プロデューサーや作家志望の人も増えました。今後このシーンはどう変わっていくでしょうか?

    ヒャダイン:
    正直なところわかりません。わからないので、慢心せずに頑張ろうと自分を律しますが、ついつい甘えてしまう。そんな自分との戦いです。下からもどんどん素晴らしい人は出てきていますし、常に「僕の代わりはいる」と思っているので、怠けることなくやっていきたいですね。

    ――ではご自身はこのあと、どう変化していくと思いますか。

    ヒャダイン:
    初期から追いかけてくれているファンの方はご存知だと思いますが、僕の人生、2007年くらいからおかしいんです(笑)。2010年に本名をバラして、2011年はアニメデビューしたり、郷ひろみさんに曲を書いたり、ドラマに出たり、声優をやったり。昔の自分がまったく想像しなかったことを楽しんでいます。5年後を考えたことも一度もないので、せいぜい考えることができて今年の12月までですかね(笑)。人の思考回路は面白くて、自分にとっての“将来”がいつかは、人によって違います。70歳くらいになった自分を想像する人もいるでしょうし、僕のように今年の年末を想像する人もいるでしょう。その人の時間の測り方や価値観が現れると思います。僕は計画的に生きることができないので、刹那に生きている感覚です。何が起こるかわからない人生を、今のところは楽しんでいますね。




    ヒャダイン

    1980年生まれ。本名前山田健一。

    京都大学を卒業後2007年に本格的な音楽活動を開始。

    動画投稿サイトへ匿名のヒャダインとしてアップした楽曲が話題になり屈指の再生数とミリオン動画数を記録。

    一方、本名での作家活動でも東方神起などへの提供曲が2作連続でオリコンチャート1位を獲得。2010年にヒャダイン=前山田健一である事を公表し、作家とアーティストをクロスオーバーした活動を開始。

    アイドルからJPOP、アニソン、ゲーム音楽など幅広い楽曲提供を行うと共に自身も歌手、タレントとして活動する。

    オフィシャルサイト

    2015.02.23

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