Music Factory Tokyo

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  • 「業界は苦しいかもしれないけど、音楽の作り手側から支えていきたい」eyelisが語るアニメシーンへの愛情(後編)
     メンバー個々がアニソンを手掛けていた縁で結成された、川崎里実(以下、川崎)と増田武史(以下、増田)、前口渉(以下、前口)によるサウンドクリエイターユニット・eyelisへのインタビュー後編。前編では、5thシングル『ページ~君と綴る物語~』に込めたテクニックや「eyelisらしさ」について語ってもらったが、後編では機材の話を中心にトークを展開した。

    取材・文:中村拓海


    ――今回、楽曲において新しく導入したり変則的に使った機材はありましたか?

    川崎:
    後から足していただいたオルガンが印象的ですね。
    前口:
    うっすらチープな音が入っているんですよね。今回はいつも使っているものはあえて使わないようにという裏テーマを自分に課していて。オルガンの音色はKOMPLETEの中に入っているNative Instrumentsの「Vintage Organs」という音源です。
    増田:
    僕は特に新しいものはありませんが、一応使ったものをメモしてきました(笑)。ドラムはAddictive Drumsで、キックだけSteven Slateを使っています。Addictive Drumsは立った感じの音なので、太めのキックがほしくてSteven Slateにしました。
    川崎:
    それってキックだけ差し替えているんですか?
    増田:
    そうです、キックのトラックだけ差し替えるんです。あとはベースがTrilianで、ピアノはIvory II、ストリングスはEastWestのSymphonicOrchestraに輪郭を補うような形で他のサンプリングを全体に足して使います。この辺りは定番といわれるソフトウェアですが、それでも使い手によってその人っぽさが出るのかもしれません。
    川崎:
    Ivoryは3人とも使っている音源ですね。オケにメロディを付けて歌っていくときにはIvoryが一番弾いていて気持ちいいかもしれません。ちゃんとグランドピアノの木の音がするというか、ぬくもりが感じられる音だなと。
    前口:
    あと、僕が工夫したのはストリングスですね。トップノートだけ生楽器をダビングしています。

    ――ハード面はどうでしょう。

    川崎:
    私は特に新しくしたものはないですね。
    増田:
    僕もハードに関しては、前回と同じままです。
    前口:
    僕は前回話していないものとして、長く使っているハードのAVALON DESIGNのVT737。アコギやエレキを録るときは必ず通すようにしているプリアンプで、非常に使いやすく、設定もしやすいです。

    ――前口さんからは前回のインタビューで「どんどん生音志向になってきている」と伺いましたが、その流れは続いているのでしょうか。

    前口:
    はい、これからもどんどんシンプルになっていくと思います。あ、でもクラブ系のサウンドも好きで、最近はダブステップをよく聴いているのですが、その流れでNative InstrumentsのMaschineを買いました。本当はこの曲でも使いたかったんですけど……。
    川崎:
    この曲にダブステップの要素を入れるのは無理がありますよ(笑)。
    前口:
    すいません(笑)。まあ生音系には合わない機材ですよね。4や8の倍数の小節だといい感じに使える機材かなと。あとMaschineはカラフルに点滅するので、暗い部屋に置いておくとテンションが上がりますし、MIDIコントローラーとしても優秀で。モジュレーションやエクスプレッションを入れたりします。

    ――実際、ライブ現場でも使われる機材ですしね。でもなぜダブステップにピンポイントで興味を持ったんですか?

    前口:
    1年ほど前、Emma Hewittという海外の女性歌手の楽曲をKATFYRがリミックスしているのを聴いて。それが本当にカッコよくて、衝撃を受けて機材を買うまでに至りました。
    川崎:
    そういう風に影響を受けたら、同じように作りたくなるタイプですか?
    前口:
    一度真似して、作り方をマスターしたいなと思いますね。なかなかできるものでもないですが。最近はBPM140くらいだと「あ、これはダブステップの要素を入れることができるのでは?」と感じて挑んでみたくなります。そしていつも不思議に思うのが、誰に言ったわけでもなく、新しい機材を手に入れるとそれに合わせた仕事がいただけるんですよね。
    増田:
    どこかで誰かが見てるのかもしれないよ?(笑)
    前口:
    怖い!ある曲が気になっていると、近いテイストの曲を発注されたりというのもありますね。

    ――そうなると逆に「多少値は張ってもおそらくすぐに出番が来るから大丈夫!」という大胆な気持ちになりそうですね。

    前口:
    確かに、欲しくなってから買うまでの決断は早いですね。でも、生音志向になってきているので、機材全体としては減らし気味になっています。
    増田:
    僕は機材を少しずつ入れ替えるタイプじゃなくて、ドカッとまとめてやっちゃうことが多いです。

    ――どういうタイミングでまとめて入れ替えるのでしょうか。

    増田:
    ある程度期間が経って、自分でマンネリを感じたときですね。状況を打破するために。そこで欲しい機材を何かひとつ見つけて、その機材に合わせて周りの環境を整えていくんです。

    ――換気、空気の入れ替えみたいな感じですね。

    増田:
    確かに、そうかもしれないですね。
    川崎:
    私も同じかも。今はちょうど入れ替えたい直前なので、新たな機材がなかったというだけで。次の作品では色々と試すことになるかもしれません。
    前口:
    そういえば、僕もWindowsからMacに変えたのは「気分を入れ替えたいから」という理由でした。あとMacはフォントが綺麗だからテンションが上がるんですよね。
    川崎:
    そういうのはアーティストとして大事ですよね。

    ――MacとWindowsの話で思い出しましたが、DAWについては、前回のインタビューで増田さんからMac でLogic Proを使っていると伺いました。ほか2人はどうでしょう?

    前口:
    僕はMacでCubaseですね。
    川崎:
    私はMacでDigital Performerです。

    ――まさかの3人バラバラなんですね(笑)。ユニットだと揃っていたほうが制作は進めやすいと思うのですが……。

    前口:
    昔からそうだから、もう今さら誰かに合わせるのも……ねえ(笑)?
    川崎:
    誰かに寄り添ったりしない3人組です(笑)。でも、私は近いうちにCubaseに乗り換えようかなと思っていますよ。

    ――前回のインタビューは、前口さんの「小難しいアレンジをしてもテレビのスピーカーからは聴こえない」という意見が大きな反響を呼びました。ほかにもアニソンだから施す工夫のようなものはあるのでしょうか。

    増田:
    アニソンはトレンドをあまり優先しないし、クリエイターとしては振り切りやすいジャンルだと感じています。どのジャンルのフレーズを持ってきてもいいというか、要するに自由なんですよね。
    前口:
    語弊があるかもしれませんが、ちょっとダサい音でも許されるというか。RolandのJVシリーズに入っているオケヒ(オーケストラル・ヒット)の「ジャン!」みたいな音って、普通のポップスでは使いにくいんですけど、テンポの速いアニソンだと効果的に入れることができる。
    川崎:
    確かに自由度があるという印象ですね。3次元だからこそ想像を無限に膨らませれるというか。
    前口:
    やはり画がありきという考えに集約されますね。僕らのやっているジャニーズものの楽曲は、2次元でそれに近いといえるかも。

    ――確かにそうですね。ゼロ年代のアニソンはより転調などを駆使した情報量の多いものが増えてきて、2010年代前半にはその手法がアイドルに取り入れられていったといえます。今年から2010年代後半に差し掛かるわけですが、どういう風にアニソンを巡る状況は変わると思いますか?

    増田:
    さっき前口さんが言っていたダブステップや、EDMといったクラブジャンルの音楽も、何かしらの形でアニソンに取り入れられてくると思います。

    ――ゲームミュージックではすでにその動きが顕著ですね。

    増田:
    若いクリエイターさんはゲーム音楽がきっかけの人も多いでしょうし、出自としてそういう色を持っている人が増えれば、シーン全体にまた一つの色が加わると考えられます。それもまたアニソンのすごいところなんですけどね。取って代わることはできないけど加わることができる。

    ――“アニソン”という定義が“なんでもあり”と同じ意味といえるくらい、許容範囲の広いジャンルだと。

    川崎:
    私は、女性の作曲家さんがどんどん増えてほしいと思いますね。10代や20代前半で「アニソンを書きたい」と思ってくれる女の子がたくさん現れてくれたら嬉しい。そのためにも、夢を与えられるような存在になりたいです。それに、“若さなりの発想”は絶対あると思うので、できるだけ早くこの世界に足を踏み入れてほしいな。
    前口:
    アニソンはどこまで行っても「いかにアニメの世界に寄り添うか」が求められるので、アニメ自体がどのように変わっていくのかという要素も大きい気がします。全編CGのアニメだと、楽曲の雰囲気も変わりますし。

    ――あと、クリエイター側のトレンドとしては、eyelisさんのような形が増えるんじゃないかと思っていて。最近は畑亜貴さん田代智一さん、黒須克彦さん、田淵智也さんによる音楽プロデュース・チーム「Q-MHz」が結成されましたが、もっとこの流れが加速しそうな気がします。

    増田:
    僕ら以外のチームはきっと、使用DAWを統一しているだろうね(笑)
    前口:
    (笑)。真面目な話をすると、アニメを作る側の予算も減ってきていると思いますし、音楽に割く予算も必然的に削らざるを得ない。そうなったときに「もうグロスであのグループに歌も作詞作曲もミックスもマスタリングもお願いしよう」という需要はもっと増えるはず。それが良質な音楽を生み出すクリエイターチームなのであれば、お互いが得をすると思うんですよね。業界的には苦しいかもしれないけど、それを音楽の作り手側から支えていきたい。
    川崎:
    ひとつの作品を丸ごとひとつのチームに任せていただく機会が増えると、より音楽的な自由度も増しますからね。
    前口:
    〇〇屋さんみたいな感じで、“音楽屋さん”として認識されると嬉しいし、そういうグループとしてやっていけたら理想ですね。

    ▼eyelis(アイリス)プロフィール


    サウンドクリエイターの川崎里実・増田武史・前口渉により結成され、2012年5月30日に、「らぶこーる」(中川かのん)、「God only knows」(テレビアニメ「神のみぞ知るセカイ」)、「本日、満開ワタシ色!」(桂ヒナギク)、「Break+Your+Destiny」(可憐GUY’S)など、メンバーが作曲・楽曲プロデュースした曲を集めたセルフカバーALBUM「PRE-PRODUCTION」でCDデビュー。
    メンバー個々としてJ-POP、アニメソングなど幅広く楽曲提供をする一方、ユニットとしてアニメーション作品の主題歌などを担当。これまでに「CANT’ TAKE MY EYES OFF YOU」(「ハヤテのごとく!CANT’ TAKE MY EYES OFF YOU」OPテーマ)、「ヒカリノキセキ/未来への扉」(「神のみぞ知るセカイ 天理篇」主題歌)、「OUTLAWS」(「THE UNLIMITED 兵部京介」EDテーマ)のシングルをリリースしている。 ユニット活動開始から3年の2015年5月30日に新たな活動を開始。2015年7月から放送開始予定のテレビアニメ「赤髪の白雪姫」EDテーマがその第一弾となる。





    2016.02.12

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