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  • 「音楽だけで食べていこうというのが、正解という時代でもない」 L-m-Tとイワツボコーダイが予測する音楽作家の未来とは?(後編)
    KAYとGRPによるユニット“L-m-T”と、イワツボコーダイの若手音楽作家3人による対談。前編では、彼らのキャリアやプロとして踏み出した一歩目、ぶつかった壁や音楽との距離感などを語ってもらったが、後編ではコライトについての価値観や、楽曲制作のコツ、そして音楽作家が今後どうなるかといった将来の予測などについて、じっくりと話を訊いた。

    >L-m-Tとイワツボコーダイが語る、音楽との適切な距離感とは? 「長く続けていくためには強烈に追い込まない」(前編)


    取材・文:中村拓海
    写真:竹内洋平


    ――イワツボさんが一番最初にコライトをしたのは、海外の音楽作家だそうですね。

    イワツボ:
    スウェーデンの作家2人ですね。僕自身は英語もしゃべれないし、共作の経験も浅かったので、かなり戸惑いましたが、周りのサポートもあって何とか形になりました。2人がコライトを始めたのはいつ?
    KAY:
    僕が2012年に初めてコライト作業に携わって、そこから少ししてGRPを誘ったので、コライトに関しては僕が先輩ですね。いまコーダイくんのマネージャーをされている方が、もともとNAOやSpontania、Def Techなどを手掛けていて、その方に誘っていただきました。有名アーティストさんに多く楽曲提供をしている作家さんが主催しているソングライティング・キャンプがあって、そこにも参加させてもらって。ここでDAICHIさんという3人共通の知人と、コーダイくんに出会いました。

    ――ちなみに、そのキャンプではどのようなことを?

    イワツボ:
    参加者はまず、トップライナーとトラックメイカーに分かれて、両方できる人も必ずどちらかに寄せるんです。そこでは予想しないものが出てきて喜ぶこともあれば、自分が行きたい方向にいけないことにストレスを感じることもある。そういう意味ですごく勉強になりますね。
    KAY:
    自分の好きなようにはなかなかできないですね。人が入ることで、方向性が変わっていくけど、結局それが自分の利点に繋がるんです。クラシック出身という原点が影響してか、それまでバラードしか書けなかったのですが、このキャンプを通して、人の作業を間近で見ることが増えたので、ミドルテンポやアップテンポの曲が作れるようになりました。コーダイくんからもジャズ調の曲を渡されたりして、ここで初めてジャズを意識して分析できるようにもなりました。

    ――経験値が大きいと

    KAY:
    そうです。多分、GRPとユニットを組んで活動しているだけだと、ジャズに触れることは多分ないと思うので。コーダイくんが歩んできた道や積んできた経験の中から、「このアーティストにはこういうのが合うと思うからやってみようよ」と言ってくれたことに対して、そもそも聴いていない立場から見て「なるほど!」とか「ここで転調するのか!」と驚かされることが多いですね。
    イワツボ:
    L-m-Tと組むことは特別多いですが、2人は僕の安易なフラッシュアイデアもパパっと形にしてくれるんです。「ここで転調どう?」みたいなことって、自分で作っただけのものだと思い浮かびもしないし、面倒くさいなと思ってしまうから。
    KAY:
    やっぱり自分でも「Bメロの途中で転調って面倒くさいなあ」とか思ってたんですね! 僕らは最初から感じてましたよ(笑)。
    イワツボ:
    (笑)。とくにアイドルやダンスミュージックって、「これやれる?」みたいな軽いノリが必要だと思うんです。案外遊び心がフックになるというか。とくにメジャーアーティストはコンペが主流になってきたなかで、ディレクターさんは一回のコンペで数百・数千の楽曲を耳にしている。そのなかで「これは歌わせたい」と思ったものって、ストレートにズバ抜けているものか、面白いフックのあるものだと考えています。
    GRP:
    その“ズバ抜けたトラック”って、本当に難しいんですよね。あまりにもポップからかけ離れすぎてもダメだし、既存のものには近づけられない。だから、ありきたりでスペシャルなものを作らないといけないんです。



    イワツボ:
    バランス感覚は難しいよね。不協和音と転調だけというのもダメだと思うから。
    GRP:
    それを読むことのできる力こそ、コライトで必要なものですね。なぜこの曲を求めているのか、発注書でリファレンスとして挙げているものに関しても、この曲のどの部分を参考にしたいのか、という分析ができないと難しいと思います。
    イワツボ:
    やっぱり一番最初に聞くのはディレクターさんで、その後にファンの方がいる形なので、常に両方を満足させれるように取り組んでいます。
    KAY:
    あと、コライトのメリットとして、3人の人脈をフル活用できるというのも大きいかもしれません。ただのライバルに紹介するのとは意味合いが違うし、作業中にあえて映画を一緒に見に行って感覚を共有したりしたい。今回の対談もコーダイくんとのコライトがないと実現していないわけだし。それもまた僕なりの距離感の取り方かもしれないですね。どんどん人脈を作って、たとえ音楽をやらなくなったとしても、その先も残っていく関係性をしっかりと構築したいというか。もちろん、作家として夢の印税生活を過ごせたらいいですけどね。

    ――コライトに関しては、世代によっては抵抗のある人もいるかと思うのですが、周りの反応はどうでしょうか。

    GRP:
    確かに、上の世代になればなるほど抵抗はあるかもしれません。いろんな人と話をしていても、ポジティブな反応をしてくれるのは若い世代の作家であることは多いです。
    イワツボ:
    あと、世代というより、性格の問題もあると思うんです。コミュニケーションを取るのが得意で、体育会系の音楽作家にはぜひ勧めたいところですね。僕は向いてないですけど(笑)。
    GRP:
    そんなことないですよ。僕らとの作業がフィニッシュしたあと、コーダイくんから突然電話が掛かってきたと思ったら「良い曲できたね」と言われて。こんな人がコミュニケーション苦手なはずがない(笑)。

    ――コライトにコミュニケーション力が重要という話は面白いですね。逆に最低限のコミュニケーションでコライトする方法はあるのでしょうか。

    イワツボ:
    メールだけのやり取りでコライトする“ネットコライト”というのもあります。もちろん直接会うほうがコミュニケーションを取れるし、そっちが向いているひとは共同作業したほうが良いです。即興性というか、偶然の要素も大きいので。僕が向いてないというのは現場でのコライトであって、ネットコライトは自分に合っていると感じました。

    ――ちなみにL-m-Tの2人はどういう作業分担で楽曲制作をしていますか。

    GRP:
    どちらかが、ドラムとベースとピアノだけが入ったベーシックを作って、もう片方がシンセサイザーやクラップを入れたり、ドラムを抜いたりしてブレイクを付けたりする、という形で進めます。お互いが両方の作業をできるので、いい気分転換にもなります。
    イワツボ:
    確か、同じDTMを使ってるんだよね?
    KAY:
    そうですね、なのでプロジェクトファイルを送りあって制作しています。
    イワツボ:
    やっぱり飽きないようにするのがいいよね。音楽を作る上で、どっちがどうと決めたら、だんだん飽きる人も居ると思いますから。飽きたり小慣れたりするのは、こういうエンターテインメントを作る上では良くないような気がするので。
    GRP:
    まさにそうですね。僕らは仕事以外でも、「面白いトラック作ったから聴いてみて」と言ってデータを送りあったりするんです。そんな感じで決まりきった関係性じゃないからこそ、後々役に立つこともありますし、物事が円滑に進むことが多い。
    KAY:
    海外だとコライトはもう主流と言っていい作曲方法になっていますよね。これもまた時代の流れだと思うので、僕らの世代がもっとグローバルな手法で曲を作っていって、海外の作家ともコンタクトを取っていきたいです。
    GRP:
    とはいえ、予算の面だったり工程の手間というところはあるよね。
    KAY:
    だからこそ、1人が1曲作る間に、僕らは3人で3曲作ればいい。自分がトラックを作って、コーダイくんが詞とトップラインをやっている間に、またGRPと2人で次のトラックに取り掛かれるわけですから。そう考えると、手間も予算の問題も解消するし、結果的にはクオリティの高いものが増えて、収入も上がるかもしれないわけで。
    GRP:
    お金のどうこうを考えないとしても、そういう発想を生み出す頭も3つになるし、何より楽しいんですよね。
    イワツボ:
    まあ、だからといって、その手法がメインではないJ-POPのクオリティが低いかと言うと、そういうわけでもないので、難しいところではありますけどね(笑)。海外はどちらかといえばリズム重視で、これでもかというくらい韻を踏んでキャッチ―にしますが、日本はメロディーの高低差や歌詞の内容を見られることが多いです。
    GRP:
    ただ、英語圏でリリースされると、全世界の人に届くわけで。そこに憧れがあります。もちろん、J-POPで自分たちの力を存分に発揮しつつ、一回きりの人生ですし、音楽という世界の人たちと共有出来るツールを存分にいかして行きたいんです。



    ――最後に、これから若い世代を担っていく3人は、今後、音楽作家という職業はどうなると思いますか?

    GRP:
    柔軟でないとますます肩身が狭くなってきて、終わってしまう人もいるかもしれません(笑)。でもどうなってしまうかという明確な事は分かりませんが。。。
    イワツボ:
    メインでこの仕事をするのではなく、副業としてやる人が多くなっていくかもしれません。福岡に住みながらオリコン一位を取ることも今は可能なわけなので。
    KAY:
    スタジオも減っていって、宅録のプロデューサーが増えるでしょうね。あと、現状は分母が多くなってきていますが、これからはまた淘汰されていくのだと思います。音楽配信が増えて、作家の取り分が減少していくので、職業作家はどんどん減って、副業でやっている人や、コライト主体の人が生き残っていくのかなと考えています。
    イワツボ:
    まあ、音楽だけで食べていこうということにこだわりを持つのが、正解という時代でもないような気がします。やりたいことはそれぞれあるわけで、実現の方法も多様化しているので、「専業作家が正義」という価値観はなくなるのかなと。
    KAY:
    それってこの世代だから思えることかもしれないですね。だって、景気が良いころを知らないわけですから。一枚のCDでウン百万みたいな経験を味わっていたり、そういう人が身近にいれば、考え方も変わっていたかもしれませんが……。
    ――では、これから音楽作家を目指す世代は、どのような活動形態、音楽遍歴をたどればいいと考えますか。
    GRP:
    僕らが音楽を始めたときって、ロックもあって、そこにディスコが合流してきて、着うた系のブームに来てと、色んな新しい音楽と出会ってきたような気がします。でも、次の世代はある程度ジャンルが出尽くしたなかで、どこかのジャンルとジャンルを接続する必要があると考えているんですよね。
    イワツボ:
    柔軟性はたしかに大事ですね。逆に、僕らの世代はボーカロイドがよくわからない作家さんも多いですから。そこで世代ならではの強みをどんどん生み出していってほしいです。
    KAY:
    あとは英語ができるといいですよね。先日ロスに語学学校へ通うために行ってきたんです。自分への投資という意味も込めて、向こうでコミュニケーションの勉強をしてきました。若いうちに行くのと今行くのはまた違うと思うので、あらかじめ行っておくのが良いのではないでしょうか。また、向こうの音楽はやっぱり空気感が全然違いますし、意識しなくても、向こうで制作すると作風が変わるんです。そういう意味でも、早い段階で海外の空気感を掴んでおいて悪いことはないように思えますね。



    イワツボ コーダイ

    Birth 1984.3.5 鹿児島出身
    作曲・作詞・編曲・プロデュース全てをこなす。 特に、歌謡テイストのメロディー作りを得意とし、コライトでは主にトップラインを担当。
    バンド出身で楽器はギター、ソフトはcubaseを使用。
    オフィシャルサイト


    KAY

    大阪府出身。高校時代より作曲、編曲を始める。
    音楽大学卒業後は音楽スクールの講師をやりながらフリーランスの作曲家として活動を始め、 ソナーポケットの「好きだよ。~100 回の後悔~」の作曲をきっかけに本格的に作曲、編曲家を志し上京。
    その後もソナーポケットの多数の楽曲に関わり、 加えて現在も「関ジャニ∞」「KAT-TUN」「西野カナ」等多くのアーティストに楽曲提供を行う。
    オフィシャルサイト



    GRP

    高校卒業後、相愛大学音楽学部作曲専攻に入学。
    卒業後本格的に作家活動を開始し、KAT-TUN やソナーポケットなど 様々なアーティストの楽曲を手掛ける。
    また、様々な楽器を多彩に使いこなすことを武器として幅広い作家活動を展開しているほか、 現在は特技の楽器演奏を生かし作家活動に加えて アーティストのサポートキーボーディスト、ギタリストとしても活動する。
    多方面にわたり活躍するマルチクリエーター。
    オフィシャルサイト


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    2015.12.11

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