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  • 作詞家・藤林聖子が語る、多ジャンルを横断するコツ「あまり“自分の核”を持ち過ぎないように」(前編)
    Hey!Say!JUMP、三代目J Soul Brothers、GENERATIONS from EXILE TRIBE、w- inds.、BIGBANGや、E-girls、水樹奈々、東京パフォーマンスドール等のほか、『ONE PIECE』『スーパー戦隊シリーズ』『平成仮面ライダーシリーズ』などアニメや特撮作品にもかかわるなど、活躍中の作詞家・藤林聖子。多岐にわたるジャンルを常に横断しながら、それぞれで一線級の作品をアウトプットし続ける彼女には熱烈なファンも多い。インタビュー前編では、作詞家としてキャリアをスタートするまでの人生や、各ジャンルに作詞を行う際の注意点、彼女が最も大事だとする“ヒアリング能力”についてなど、じっくりと作詞のコツを語ってもらった。
    取材・文:中村拓海
    写真:竹内洋平


    ――藤林さんが作詞に触れた、もしくは言葉を扱うことを意識し始めたきっかけから聞かせてください。

    藤林:
    原体験的なことでいえば、80年代アイドルの全盛期を小学生として過ごしたので、秋元康さんの存在が強くて、そこで「作詞家」という職業を知りました。学校の読書感想文や作文など、自分が書いた文章を褒められることが多かったのですが、どちらかといえばその頃は、本を「読む」ことの方が好きだったと記憶しています。

    ――どういう本を読んでいたのでしょうか。

    藤林:
    親戚のお兄ちゃんに読書好きがいて、彼からブームになる前の村上春樹さんや村上龍さんなどを勧められました。本を読んでいて楽しい部分って、「この一文がわかる」とか「この言葉が心にくる」という瞬間だと思うのですが、それは自分が歌詞を書く時にも意識している部分で。自分がぐっとくるものが、他人にとってどうかはわからないけれど、誰か一人でもそういう人がいればいいなと考えて作っています。

    ――ちなみに、作詞家という仕事を意識し始めたのは、どのタイミングですか?

    藤林:
    偶然作詞家さんと知り合う機会があったから、ですね。女性誌の編集部でアルバイトなどをしていた頃です。その頃は膨大な数の時計やスカーフに、延々とキャプションを付ける仕事などがメインでしたね。

    ――プロになったきっかけは?

    藤林:
    意外とプロセスは少ないのですが、先述した作詞家さんから「曲ありきじゃなくてもいいから、何個か書いてみて」とお願いされたので、20~30曲分の歌詞を書いたんです。それをマネージャーさんに渡したところ、事務所の方からお声がけいただいて、会うことになりました。ただ、結局そこに所属はせずに、別の構成作家さんから紹介してもらった縁で、今の事務所へ籍を置くことになった、という流れです。



    ――ちなみにその曲数をどれくらいの期間で書いたのでしょうか。

    藤林:
    その時は特に制約もなかったので、1週間くらいで書きあがりました。ちなみに私、今どき珍しいのですが、コンペからデビューしたわけではないんです。事務所の方がアニメの案件を持ってきてくれて、教えていただきながら進行したのが、初めてプロとして挑んだ仕事でした。

    ――とても順調なキャリアの重ね方だと思うのですが、最初にぶつかった壁などはありますか?

    藤林:
    逆にコンペに慣れていなかったせいで、方法論の違うJ-POPのフィールドでは苦戦して、飲み込むにも少し時間が掛かりました。ただ、特撮系の仕事に関しては順調だったと思います。

    ――J-POPと特撮・アニメソングは、それぞれ歌詞という面ではどう違うのでしょう。

    藤林:
    一番大きく違うのは、原作があるかないかです。アニメの方は当然、原作があって、その主人公なり脇役の人なりキャラクターソングみたいなものであれば、その人の心情になり切ることが大事なのですが、アーティストさんの場合は、例えば「失恋の歌」というプロットが与えられる。つまり、自分で脚本していく部分が多いということですね。

    ――アニソンは設定の中で遊べるけれど、ポップスはご自身で具体性を持たせる必要があると。

    藤林:
    そうです。そこに歌い手さんの性格が重なってくるわけなので。また、言葉遊びのバランスに気を遣わなければいけないですし、その人の枠を超えないように微調整が必要になります。

    ――それを上手くコントロールできるようになったのはいつ頃ですか?

    藤林:
    2000年ぐらいから、アーティストさんとの共作を何度か重ねて、「この人だったらこういう言葉を使わないよね」という理解や、曲のジャンルによっても世界観が違うということを自分で体験し、やっと飲み込めるようになりました。それに、同世代のクリエイターが多く活躍していたので、楽しい経験だったと今でも思っています。アーティストとディレクターの間に立つようなものだったので、双方の主張が身をもって理解でき、どういうことを調整すればいいか学びました。

    ――クライアントの意図を読み取るヒアリング能力は、一朝一夕で身につくものではないと思います。それを効果的に習得するにはどうすればよいでしょうか。

    藤林:
    2000年前後だと、レコード会社の中でもディレクターさんの趣味趣向が出た低バジェットだけど面白い案件が多くて、それらの案件に携わることが、最もクライアントの要望を汲み取る能力を上げる方法だったと思います。でも、今だと新人作詞家はコンペに挑戦し続ける日々が続いてしまうという印象ですね。歌手自体の母数が減っている影響もあるのかもしれません。今すぐ使えるテクニックだと、コンペシートに書いてあるNG項目をしっかり見ることですね。“NGにする=気を遣っている部分”なので、ネガティブになっている理由を探って、アーティスト側が打ち出したい・見せたい側面を読み解いていくと、そこに隠れた要望も見えてくると思います。

    ――藤林さんは、特撮・アニメ・J-POPなど、様々なジャンルでアウトプットをしていますが、別ジャンルの仕事が同時に入ってきた場合、どういう風にご自身の中でスイッチを切り替えますか?

    藤林:
    気持ちの度合いや勢いを、アニメ・特撮なら強火に、ポップスなら弱火にします。あとはそれぞれのジャンルで曲調が違うので、自然とそれに引っ張られることも多いですね。あと、バラード系ならヘッドフォンを使って没入できるようにしたり、ダンス系のものはスピーカーから音を出して、広がりを持たせてから、歌詞の世界観をイメージしています。なんというか、狭い範囲の人に話しかけるか、多くの人に話しかけるかという違いのようなものですね。

    ――アーティストがグループなのか、ソロなのかで書き方は変わりますか。

    藤林:
    ソロの方であれば、その方のことだけを見ていればいいのと同じように複数人のグループでも、“顔”になる人が誰かしらいると思うんです。だからその人を軸にして考えて「メロディがこうなっているから、誰か別の人が入ってくるんだろうな」という感じで、パートを分けていくという手法を使っています。

    ――藤林さんを表す言葉として、「時代を先取りする歌詞」というフレーズが使われているのをよく目にしますが、ご自身ではそれをどう捉えていますか。

    藤林:
    「時代を先取り」は意味合い的に合っているのかわかりませんが、おそらく特撮の楽曲を手掛けたときに、結果的に先の展開を言い当てたりしているからだと思います。とくに『仮面ライダー』シリーズだとアップテンポな楽曲が多いので、Aメロ→Bメロ→サビと歌詞を書いているうちに、どんどん展開していかないと辻褄が合わなくなる時があって。Aがあって、Bで少しトーンを落として、Cで盛り上げながら期待感を煽る感じに持っていく、といった感じです。それが結果として、ストーリー展開に重なるという。

    ――作詞も少しアクションっぽくなったりするのでしょうか。

    藤林:
    そうですね。だから1~2話の台本をもらった時点で、その先の展開も予想して歌詞を書くわけです。それがたまたま当たっちゃうだけで(笑)。いつも業界の方からも「ほんとに台本二冊だけでここまで書いているんですか?」と突っ込まれたりします。

    ――台本は知らなくても、物語で最終的に伝えたい部分が共有できているからこそ書ける歌詞なのでしょうね。

    藤林:
    そうですね。特撮ものは、いち作家が番組プロデューサーと打ち合わせできたりすることが多く、ヒアリング能力を鍛えるいい機会だったとあらためて思います。

    ――ここまでは藤林さんのヒアリング能力の高さを聞いてきましたが、ご自身が思っている作家としての核の部分には何があると考えますか?

    藤林:
    個人的にはむしろ、あまり“自分の核”を持ち過ぎないようにしています。自分自身が歌ってリリースするわけではないですし、歌ってくださる方になるべく近くならなければいけないと思っていて。そのためにアーティスト本人とコミュニケーションを図ることもありますが、基本的にはお互い尊重しあえる距離感を保てるよう心がけています。それは多分、人によって違うのですが、LINEで連絡する仲、くらいがベストかもしれません。一緒に食事に行って話してしまうと、また相手も緊張してしまうでしょうから。もちろん、長く一緒に仕事していればいるほど、感情が入ることはありますよ。



    ――初めてお仕事する際には、どこまで対象のことを調べるのでしょう。

    藤林:
    ホームページやブログを見たりしますが、他の曲に引っ張られてしまうのが怖いので、これまでの楽曲は進んで聴いたりはしないです。下手に固定観念を持ち過ぎても、使える言葉が限られてくるので。

    ――普段、1曲を作詞する際はどれくらいの時間を掛けますか?

    藤林:
    早くても3時間で、平均5,6時間といったところです。書き終わったら一日寝かせてチェックして、フィニッシュするという流れですね。あと、他の方に褒めていただくものって、早く書けたものが多いです。難産だったのは、「ジョジョ その血の記憶〜end of THE WORLD〜」(『ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース エジプト編』オープニング曲)ですね。詞先だったし、入れたい要素も多く、ファンの方の思い入れも深い作品だったこともあって。

    ――詞先の割合はどのくらいなのでしょう。

    藤林:
    ポップスの特性上、詞先は1割くらいです。でも、昨年は竹達彩奈さんの「齧りかけの林檎」(『デンキ街の本屋さん』オープニング曲)で、筒美京平先生との共作をしたのですが、これは互いに曲と詞を同時進行で作って合体させていく、という手法を取りました。「齧りかけの林檎」は結果的に詞を尊重したものになり、京平先生が先に作った曲をベースにしたものは、アルバムに収録されています。あと、多田慎也さんとも詞先でタッグを組ませていただきました。シンガーソングライターをされている方だけあって、お若いのに柔軟な対応をしていただいて、すごく助かりました。

    >「アーティストさんが書く歌詞と同じものを書いて、『作詞家です』と言ってはダメ」藤林聖子が語る、作詞家としての矜持(後編)

    藤林聖子(Shoko Fujibayashi)

    1995年作詞家デビュー。サウンドのグルーヴを壊さず日本語をのせるスキルで注目され、独特な言葉選びにも定評がある。
    E-girls の大ヒット曲「Follow Me」を始め、平井堅、水樹奈々、BENI、三代目J Soul Brothers、Hey!Say!JUMP、w-inds.、BIGBANG、BOA、T-ARA、等様々なジャンルのアーティスト作品から、テレビアニメ『ONE PIECE』主題歌「ウィーアー!」「ウィーゴー!」、『ジョジョの奇妙な冒険』『ドキドキ!プリキュア』等の主題歌や仮面ライダーシリーズ、スーパー戦隊シリーズ、更にはドラマ主題歌、映画主題歌、その他CMソングまで多岐に渡って活躍。映像作品の芯を理解しアーティストの世界観として創り上げる能力とスピード感にも定評がある。
    藤林ワールド全開の2014年NHKみんなのうた「29Qのうた」(歌:つるの剛士)も話題に。年間約100曲、作詞1本で多方面に及び活躍する稀有な存在として注目される作詞家。
    オフィシャルサイト



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    2015.11.11

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